2010年の書評④「イビチャ・オシムの真実」

 以前、木村元彦氏の「オシムの言葉」を読んでいたので、同じような内容なのでは、と思っていたが、若干異なっていた。この本は、よりオシム氏に近い、主観的な内容だった(自伝だから当然か)。
 日本語版刊行に向けた書き下ろしを含む全7章で構成されていて、オシム氏への愛情、敬意やオシム氏のサッカー感、郷土愛、その母国が戦火にまみれる中何もできずにいた負い目など、濃密な半生とそこから得た強固な自己を読み取ることができる。そして、戦争は恐ろしく、何も生まないものだ。
 オシム氏が率いたシュトゥルム・グラーツのデータが載っているのがうれしい。元大分トリニータ監督のランコ・ポポヴィッチ氏や現在アヤックスにいるパンテリッチ選手の名前も見ることができる。それにしても、南アフリカのベンチで指揮を執るオシム氏が見たかった…。
 あと、訳者によるあとがきを読んで、日本代表選手の生温さに愕然とした。これでは、世界で勝てません。(1月27日読了)

イビチャ・オシムの真実

イビチャ・オシムの真実